21世紀のキャリアデザイン

水野 修次郎

キャリアデザインカウンセリング研究所所長


働く世界の変化

 21世紀の仕事の働くことの意味に大きな変化が生じています。働く人をどの会社に縛り付けることなく、キャリアを積んでいく境界キャリア( Arthur,1995)の進展で、職務、組織、産業の壁を越えて動くキャリアが実現しました。会社は、もはや生涯雇用でなくなり、社内でのキャリアアップトレーニング(OJT)は少なくなり、キャリアアップの責任は自律する個人に課せられるようになりました。

 1940年代のキャリアは、人と会社とのマッチングを客観的に測定して、どの会社に入るかを決める時代でした。産業社会が求める人材を効率よく見つけるために、個人の特質や能力を客観的に測定して、その特色や能力に適合する職業をマッチングするという課題がありました。

 1970年代の産業社会では、会社内の階層を登るという官僚社会の典型がキャリアもモデルとされていました。教育は、産業が求める人材を大量に生産するという目的に適うようにデザインされていました。個人のキャリア発達は、会社が面倒をみてくれたので、キャリアの発達は会社がその責任を果たすことが求めれられていました。

 21世紀は、まったく様相が変わってきました。働く世界が変幻自在(Hall, 1996)になったのです。IT社会の実現とグローバリゼーションによって、働くことの意味に変化が生じました。一生涯同じ仕事をする時代ではなくなりました。その代りに、働く人には、生涯にわたり雇用される能力を維持する責任が課せられました。自律したキャリア、エンプロイヤビリティの維持や、キャリアアップの個人責任です。

 現在は、第四次産業革命が進行しています。IT技術の発達に従い働き方に変化生じてきて、好きな時に好きな時間だけ働くというスタイルが増加する傾向にあります(内閣府、2017年)。また、人間の働く仕事の一部が、AIによって代替される可能性も生じています。

 

21世紀の課題

 21世紀は、予測できるキャリアのステージモデルが終焉しました。キャリアは、自己形成する物語となりました。このように不安的な働く世界の中で、安定しているものは、個人の中で生まれてから死ぬまで一貫していて、その人の中に統合されている生きる意味です。生きる意味は、自分についての物語りとして、いかに自己が変化したか、あるいは同じであったかを語られます。個人は、今までの人生で起きたさまざまな変化にどのように応答していたかを語ります。このような語りの基礎に、自分を構成しているライフテーマがあります。ライフテーマは、自己予言でもあります。人間の未来は、その人の台本に書かています。ある意味では、人生は自己予言の完結ともいえます(Savickas, 2011)

 

ライフテーマの構成、脱構成、共構成

 ライフテーマは、子どもころから受け身的に苦しんでいる課題が基盤になって構成されています。だれにでも「同じ苦い思いをあと何回経験するのだるか」「この体験だけは繰り返したくない」などと幾度も枕を涙で濡らしている経験があるでしょう。このような受苦していることを乗り越え得て、成功体験に転換することが人生の課題です。

 ライフテーマは、現在の自分にズレを感じ、混乱しているときに表面化します。自己をどのように構成してきたかを語りながら、忘れていたこと、取りこぼしていたこと、分離されていた経験に気が付きます。自分の人生が一貫するまとまったものとして理解できると、人生やキャリアを未来に延長して理解することが可能になります。結局、未来でも同じようなことはまた起きるものでしょう。

21世紀は、さらに自己責任の時代となりました。自分にとって大切なこと(mattering)、意味があること(sense making)が問われる時代となりました。幸福な人生には、人間関係(love)、仕事(career)、友人(friend, community)の3つのバランスが必要です。社会的引きこもりには、仕事や友人が欠けています。ニートには、仕事が欠けています。退職後の人生には、コミュニティや生きがい(work)が欠けています。

21世紀の社会は、自分のストーリーを聞いてもらうための観客や証人が必要となります。ライフテーマは、社会文脈の中で構成されるものなので、周りとの人との関係性や社会の評判、適応力などが重層的に関係しています。人生の意味を問うのが、特に21世紀の課題となるでしょう。

 

 

Arthur, M. 1995.The Boundaryless Career: A New Employment Principle for a New Organizational Era Career NY: Oxford Press.

Douglass T. Hall (1996) “Protean Careers of the 21st Century” Academy of Management Executive, Vol.10,4,8-16

金井壽宏(Kanai Toshihiro) 『働く人のキャリアデザイン』PHP新書2001

Savickas、M、2012 .Life Design: A Paradigm for Career Intervention in the 21st Century,

Journal of Counseling & Development,13-19 水野修次郎 翻訳

Savickas, M.L. 2011. Career Counseling.  Washington, D.C.: APA.

内閣府(2017)『日本経済2016-2017』

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